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レッスンで「もっと歌って」と先生から言われて困惑したことはありませんか?「歌って言ってもピアノには口はついていないし、弦楽器のようにヴィヴラートをかけることはできないし、どうしたらいいのか?」。これは上級者やピアニストになる人でも上達過程で何度も疑問に思うようなことです。この記事では「歌(カンタービレ)」のテクニックを類別しながら、具体的にどのように動作すればうまく歌えるかを丁寧に解説することを試みます。
動作と言ってしまいましたがまずはピアノにおいて最も大事なこと、つまり「アーティキュレーション」から始めましょう。アーティキュレーションとは音と音との区切り方のことを言います。これをもっと大きな単位で考えると「フレージング」になります。難しいことは言っていません。アーティキュレーションとはレガートやスタッカート、ポルタート(ノンレガート)などのことに過ぎないのです。つまり音の発音のさせ方のことですね。ちなみに2音ずつ区切ることもアーティキュレーションのことですね。アーティキュレートといえば音をはっきりと際立たせることを指したりもします。
で、まず基本の基本のレガートなのですが、「歌いなさい」と言われているのに変に力んでしまって、音と音とのつながりへの意識が疎かになっているようなことはままにあります。例えばロマン派などを叙情的に歌うにはまずレガートでなければなりません。特に「モルトレガート」と言ってかなりよくレガートされた状態を作ることが推奨されます。
モルトレガートをいかにするか。まず2音をモルトレガートにするには最初の音を離す(離鍵)タイミングと2番目の音を弾くタイミングを混ぜることが大事になるのです。具体的にいうと何らかの音高のドとレを弾くとします。ドを弾いて、レを打鍵するとしても、まだドを伸ばしておくのです。このようなアプローチで、音階を弾いているときも、2-4音ほど鍵盤を押し込んだままにする、つまり離鍵を送らすことで、モルトレガートができます。
次に音量調整の技術を紹介します。例えばリストのため息のアルペジオの音形などを考えてください。下から上に、上から下に、と言って戻ってくるような音形です。もちろんもっと小さい範囲でこれをする曲もたくさんあります。
このような上へ登り下へと下がる音形を見つけたら、上に上がる時にクレッシェンドし、下に下がる時にディミヌエンドしてみてください。
これだけでうんと歌っているように聴こえます。
もちろん人によっては、音の高さに合わせて音量を調整するのは古くさい、という人もいますが、古臭いもなにも、演奏様式としてロマン派隆盛の前時代から引き継げるものは引き継いだらいいのです。現に多くの巨匠やヨーロッパで修行した若手ピアニストがこのように弾いています。まずは試してみて、いいと思ったらそれを盗んでみる。芸術的であることを恐れないでください。
さて、次はこの音楽教室が冠している名前、「ロシアピアニズム」でよく使われる朗々と歌う歌い方をお教えします。それが「粘り」です。ロシアやウクライナなど東欧の巨匠や学生はとにかくよくピアノが歌うように聴こえると言います。なぜでしょうか。単に音量だけではないのです。要するに音を際立たせてそれにキャラクターを与えるという技術が代々伝承されています。
そのためこの「粘る」という技術を使うには段階があります。第一段階は読譜をしながら何を際立たせたいのかを絞ることです。そして第二段階は粘るための手首の動作とレガートと音量表現をはめ込むこと。
まず第一段階を検討しましょう。楽譜の読み方は色々あってまず、縦のライン、つまり和声的な観点で分析するのと、横のライン、つまり対位法的な観点で分析することの2通りあります。この時大事なのは横のラインです。全体からして和音的な和声の補強をしているに過ぎない動きをする伴奏部分には意識を向けないで、その楽曲のその部分を特に特徴づけているメロディの部分に目を向けてください。もちろんメロディは毎回右手に出てくるとは限りません。内声やバスに出てくることもあります。メロディの声部が進行に伴って別のパートに移り変わることもあります。
そして、メロディが発見できたら次は実際に朗々と粘るような表現の動作を見つけましょう。粘る効果をつけるにはクレッシェンドやディミヌエンドをつけたり、大事な箇所にアクセントをつけたりします。これは実際のメロディによって変わってくるので、自分で考えてみてください。大事なのはこの時に手首をリラックスさせて、手首をくるくる回してレガートと音量表現を助けることです。トリフォノフや藤田真央がこの手の動作のプロです。よければぜひ動画をご覧になってください。
なおトリフォノフも藤田真央も本研究所の講師と同じ「イグムノフ」を祖とする流派です。ご興味のある方はホームページよりレッスンに申し込んでみてください。
さて次に、前節でも紹介した「際立たせ」方について解説します。例としてラフマニノフのト短調の前奏曲(op.23-5)の中間部を想定してください。ここはアルペジオ箇所は先ほど説明しましたようにクレッシェンドとディミヌエンドを使います。しかしそれだけでは十分ではありません。小指(ソプラノ)と親指(アルト)に交互にメロディが出てきます。こういう場所にメロディが来たら普通のフォームでは際立たせるのが困難です。その時な便利なのが、第一関節を曲げてうまく腕を柔軟に動かしながらアクセントをつけることです。
これまで様々な「歌う」技術について紹介してきました。最後にこれは技術とまではいえないために本文には書かなかったのですが、講師がスクリャービンの大家のボリス・ベクテレフから学んだことがあります。それは歌わせたいメロディを音楽的に自分で声に出して歌ってみること。そしてその上で際立たせて弾いてみてください。要は意識の向けようなのですが、これをするのとそうでないので全然弾き方が変わってきます。ぜひ試してくださいね!
この記事に紹介したようなことは本研究所のレッスンで実際に講師による参考演奏に追従する形で学んでいただけます。ヨーロッパでロシア奏法を専門的に学んだ若手ピアニストによる特別なレッスンですので、興味を持った方はホームより初回レッスンを申し込まれてください。
ロシアピアニズム研究所〈クラビアーノ〉では、
音色・倍音・低音・身体操作・重心移動・打鍵以前の準備まで含め、
“空間を変える音”を作るためのレッスンを行っています。
初回診断レッスンでは、現在の演奏を分析しながら、
「なぜ音が薄くなるのか」「どうすれば深い響きになるのか」を
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